ボトックスとしわ (その2)

「しわをボトックスで消す施術内容」
当院は東京都内、広尾という外国人の多い、小さな街にあります。当ホームページでも述べてありますが、ボトックスは現在、しわ以外の治療にも、エラの筋肉のスリム化、脇や手足の多汗症、片頭痛、などで広く使われています。当院ではとくに、頭痛の治療にボトックスを使われる患者さんも多くいらっしゃいます。
  
本日は、しわを対象としたボトックスの治療例について述べます。なお、ここで使われている容量はアラガン社のボトックスを基準に論じてあります。
  
眉間のしわ:眉間のしわには難しい表情をしたときにのみできるタイプの縦しわ(11時サインともいう)、表情にかかわらず常に存在するタイプとあります。前者の場合はボトックスがよく効く場合で、通常治療から1週間以内に効果が現れ、4-5か月その効果は持続します。ボトックスは神経末端の部分で、筋肉接合部との間で、伝達物質が出なくなることで筋肉を麻痺させ、しわができにくくします。
 
ターゲットとなる筋肉は皺眉筋といわれる眉毛に並走する筋肉と、鼻根筋という鼻の付け根に上下に走る筋肉となります。通常、眉毛のやや上方に4-6か所、鼻の付け根(鼻根筋に)に1か所注射します。容量は15-20単位となります。なお、注射する際には、眉毛の外側は浅く、内側は深く施術します。なお、難しい表情をしなくても常に眉間部に縦しわがある場合は、ヒアルロン酸などの注入物がよい場合もあります(ただし、この部位のヒアルロン酸注射には細心の注意が必要です)。注射後、4時間ほど横になることを避け、水泳などの運動も避けて、4-5日後に効果が出現します。その効果のピークは2週間後に現れると言われていますが、当院では1週間後の結果を見て、必要があれば追加のタッチアップ注射を無料でおこなっています(1週間後の保証制度)。費用は、眉間のしわのみの場合、3万円に消費税となります。
 
額(おでこ)のしわ:額の横じわは上方をむいたときにできますが、これも表情筋の一つである前頭筋という、額の上下に走る筋肉が収縮することによって90度方向にできるしわです。額のしわも表情を作っている時だけにできる横じわと、表情にかかわらず常に存在するしわもあることがあります。ボトックスがよい適用になるのは前者の場合で、通常おでこの8か所にトータルで15-20単位注射します。
 
施術の上で特に注意すべき点は、眉毛の外側に近い部位にある額の横じわには治療をしない方がよいことが多いということです。この部位にボトックスが効くと、眉毛の下垂が起こります。それからもう一つの問題は、瞼(まぶた)を開く時に、人によってはおでこの筋肉(前頭筋)を使っている場合が時々あります。このタイプの方の額にボトックス治療を施すと、まぶたが開きにくくなってしまいます。こうした問題を防ぐには、あらかじめ眉毛の上に指を横にあてて前頭筋の作用をブロックして、その患者さんがどれくらい前頭筋を使ってまぶたを開けているかチェックします。前頭筋が大きく関与する場合には額の下方へのボトックス注射は避けます。
 
ちなみに同じボツリヌス菌毒素製剤でも、ヨーロッパ製のディスポートという製品は、より拡散しやすく上記のような問題が起こりやすいようです。治療費はおでこだけの場合3万円に消費税ですが、眉間か目尻と一緒にした場合には両部位で5万円に消費税とややお安くなります。効果は眉間よりも長く、5か月以上続く場合もよくあります。眉間同様、1週間後の保証制度があります。おでこにボトックスを注射する際にもう一つ付記することは、注射の仕方で、眉毛の形を変化することができるということです。眉毛の外側をきりっと上方へ拳上したい際にもこの方法は用いられます。また、まぶたのたるみが進行している患者さんにもこの方法は適しています。
 
目尻のしわ: 目尻のしわはやはり、目で笑った時にできる目尻から扇状にできる表情じわで、目尻外側から上方にできるタイプ、下方にできるタイプ、そしてひろく上下にできるタイプとあります。また、他の部位のしわ同様、目で笑っていないときにもできている深いしわと、笑っていないときにはしわの目立たないタイプとあります。ボトックスが著効を示すタイプは後者のタイプです。笑ってないときにも深いしわがある場合には、そのしわにヒアルロン酸注射をする場合もあります。
 
治療量はしわの数にもよりますが、左右で18-25単位程度となります。目尻のしわ部位へのボトックスの治療でもう一つ付記することは、眉毛の形を変えることができることです。眉毛の外側直下の眼輪筋へのボトックス注射で、眉毛の外側をやや上方へ持ち上げることができる場合があります(すべての方にできる方法ではありません)。
 
上口唇のしわ:上口唇に発生する縦じわは60歳代以上の女性に多くみられますが、これは口の周りをぐるっと囲むようにある口輪筋の作用によって起こります。男性にこの現象があまり見られないのは、この部位に髭があるからです。
 
治療をする際には患者さんに口をすぼめてもらい、特に強く起こる縦じわをペンでマーキングしたのち、10-15単位を4-5か所に注射します。くちびるへのボトックスの注射で注意することは、左右のバランスが崩れると唇の形が変わったり、発声がしづらくなることがあります。
 
その他の顔面部位への注射:ボトックスはその他、顔面ではエラの筋肉へ注射してフェイスラインを細くしたり、顎関節症の治療にも用いられます。また、あごにできる夏みかんの皮のような凸凹状態もボトックスの注射が著効を示すことがあります。一方で、法令線(ほうれいせん)やマリオネット線(口の外側から斜め下方に伸びるしわ)にはボトックスは効果がありません。こうした部位にはヒアルロン酸注射が勧められます。
 
「ボトックスのしわ治療における副作用や失敗例」
副作用:ボトックス治療関連の副作用はきわめて少ないのですが、代表的なものとしては、まぶたが開きにくくなる(眼瞼下垂)が1%以下の頻度で見られます。とくに眉間への治療でみられる合併症です。この状態が起こったとしても、3-6週くらいで自然に元の状態に戻ります。ただ、一度この状態が起こった方は、再度同じ状態になりやすい傾向があります。次にみられるのが、治療のところでも述べましたが、おでこに治療した際に眉毛の形が変わったり、下垂したりすることがあります。
 
魚の油、DHA, EPA, アスピリンや痛みどめを服用中の方にはあざが出やすい傾向があります。以上の他には、卵アレルギーの方、過去に顔面神経麻痺にかかったことのある方、妊娠、授乳中の方、これから3か月以内に妊娠する予定の方にもお勧めできません。ボトックスは片頭痛の治療にも用いられていますが、非常に稀な合併症としては、健常人に逆に頭痛を引き起こすことがあります。また、風邪気味の時、体力がないときにも状態が悪化することがありますので、治療できません。一部の抗生物質を服用中の方も、要注意とされています。
 
失敗例:極端な失敗例というのはなかなか起こらないものですが、これまで述べてきたように、ボトックスを用いた顔のしわの治療は、表情筋と呼ばれる筋肉群を麻痺させて美容上のより良い効果を期待する治療ですので、顔面の筋肉や神経の解剖をよく理解していないと期待する結果をだすことは難しいでしょう。アメリカではボトックスの治療は形成外科専門医か皮膚科専門医で適切な研修を受けた医師のみが行うのが通例となっています。

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